不動産管理業の仕訳実務を整理していきます。流通業や製造業とは仕訳が違いますよ。

不動産管理業の基本業務のひとつである「家賃収納」では、
(1)入居している人から家賃が家賃管理口座に振り込まれてきます。
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 家賃は通常前月末までに入金することとされていますから、売掛金ではありません。また、家主の家賃収納だけを請け負っている業者の場合、自社の収益につながる”家賃”ではありません。つまり、家主のお金を預かっているだけと考えます。

普通預金 10万円/ 預り金(家賃) 10万円
※家賃以外にも多くの預り金が発生しますから「預り金(家賃)」としています。


(2)預かった家賃を家主に支払います。

 ここで、家賃収納業務の代行費用(10%とします)を請求し、家主から代金をもらわなければなりません。しかし、都度入金してもらうのは手間なので、家賃の支払と相殺することにします。

預り金(家賃) 10万円 / 売上高(管理代行) 1万円
               / 普通預金  9万円


(3)サブリース業者が入居者から家賃を受け取った場合

 サブリース業者の場合、物件を又貸ししているようなものですから、受け取った家賃は「家賃収入」になります。一方で家主に支払う家賃は「賃借料」や「支払賃料」とします。ただし、家賃は前払い(前月末まで)ですから、売上や費用として直接計上することはできません。

普通預金 10万円    / 前受金(家賃) 10万円

前払費用(賃料)  8万円/ 普通預金  8万円

※サブリース業者の翌月処理

前受金(家賃) 10万円 / 売上高(家賃収入) 10万円

支払賃料  8万円    / 前払費用(賃料)  8万円


(4)共益費の運用を請け負っている場合

 共益費も家賃と同様に前月末までに入金されます。この場合、共益費は預り金としておきます。そして、共用部分の電気代などに充てられ、支払時は立替金で処理します。なぜ、預り金(負債)と立替金(資産)の両建てになっているのでしょう。それは、共益費は概算で徴収することが多く、電気代の多い月や少ない月、その他突然の出費などで共益費が余ったり、不足したりすることが考えられるからです。決算時に相殺し、最終的に預り金とするか立替金とするかを判断します。

普通預金 3千円 / 預り金(共益費) 3千円

立替金(共益費) 2千円 / 普通預金 2千円


(5)新規契約時

 新しく入居者が入るときは、通常、敷金や礼金を支払う場合が多いと思います。この敷金や礼金は家主にそのまま支払うお金です。よって、新しい入居者から契約金として一旦預かり、その後家主に支払います。

普通預金 / 預り金(契約金)
預り金(契約金) /普通預金


※但し、サブリースの場合は、敷金は業者が預かり、また、礼金は業者の売上高として処理します。
普通預金 / 預り金(敷金)
普通預金 / 売上高(礼金)


(6)退去時

 退去時には、入居時に預かった敷金を返金することになりますが、この敷金は家主が預かっていますから、一旦家主から敷金全額を入金してもらいます。そして、原状回復費としてクリーニング費用を差し引いて退去した人に支払います。

普通預金 / 預り金(敷金)
預り金(敷金) / 未払金(クリーニング)
預り金(敷金) / 普通預金

※後ほど、クリーニング費用はクリーニング業者に支払います。
未払金(クリーニング) / 普通預金

 基本的な仕訳はこのようになりますが、管理業者によっては賃貸の斡旋も同時に行っていたり、クリーニングを自社内で行う場合など、さまざまな業態がありますから注意が必要です。